ソウル紀行8

アンニョンハセヨ。
ソウルには夜のとばりがおりつつある。お腹がすいてきた。参鶏湯(サムゲタン)が食べたい。微妙な友人も「参鶏湯で良し」と言う。免税店巡りをしていた車内で「昨夜はロッテで参鶏湯を食べた」とガイドさんに言っていた人がいた。そんな記憶を頼りに地下鉄から出たら素敵なストリートを放浪した。微妙な友人はすぐコスメショップに寄り道をする。店からでると方向感覚を失い来た道を逆にたどっていたりする。ところどころ店を覗きつつ歩き疲れて機嫌を悪くして無口になって進む。ロッテがホテルなのかと思ってロッテホテルにたどり着いたが私の嗅覚が「お呼びでない」という臭いをかぎ取り、いそいそとしり込みをしてホテルを立ち去った。そして、引き返したロッテデパートで参鶏湯屋を見つけた。無事、無口に参鶏湯を食べることができた。参鶏湯やアワビ粥を食べて気付いたのだが、私はふやけた米が好きではない。
ロッテホテルでしり込みを無駄にしたのではない。ホテル前にタクシーが沢山停まっていることを把握しておいたのだ。私は歩き疲れ無口になり、さらに金魚のフン化した友人にうんざりしていたので、宿泊先のホテルまでタクシーで帰ることにした。
宿泊先のホテルへ着いた。友人は先に客室へ戻った。私はホテルの向かいのセブンへ買い物へ出かけた。横断歩道の脇に鳥の丸焼き屋台があった。こんがり焼けた鳥がクルクル回転し、香ばしい匂いを放っている。食べたかった。でも、さっき参鶏湯で鳥を食べたばっかりだった。鳥の丸焼きに未練を残しつつ無口にホテルの部屋に戻り、無口にシャワーを浴びて、無口に寝た。明け方微妙な友人が部屋の明かりを全灯させトイレに行き、無口に腹を立てた。